ドンマー・ウェアハウス「コリオレイナス」観劇記録(2013年12月16日)

以下の記事は2014年4月に投稿した、管理人の個人ブログから転載・編集したものです。
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いよいよ「コリオレイナス」の上演時間が近づいて来ました。

まず、チケットをピックアップしにDonmar Warehouseへ。
郵送も出来たみたいなのですが、なくすと怖いので、私はBox Officeに取りにいくことにしています。

1年と8ヶ月ぶりくらいのドンマーでの観劇です。
初めてドンマーで見たマークが出演していた“The Recruiting Officer”も、同じ芸術監督のJosie Rourkeによる演出。
前回は一階席(Stall)でしたが、今回は人気公演ということもあり2階席(Circle)。チケットを確保出来ただけも奇跡です。

「コリオレイナス」はシェイクスピアの書いた最後の悲劇です。
隣国ヴォルサイとの戦いに勝利したローマの将軍ケーアス・マーシャス(後にコリオレイナス)が
帰国後、英雄として称えられ執政官に推挙されるものの、
その傲慢さ故、彼を疎む市民を利用した護民官の策略によって、
反逆者としてローマから追放され、ヴォルサイに潜伏し祖国への復讐を誓うという筋書きになっています。

映像作品としてはレイフ・ファインズ主演の現代版コリオレイナス=「英雄の証明」が一番手に入りやすいので、
予習の一つとして鑑賞するのもいいかと思います。

この公演が初めてアナウンスされた時、
コリオレイナストム・ヒドルストン、その友人のメニーニアスマーク・ゲイティスが演じる、
というところまで発表されたわけですが、随分若い配役だな、と思ったものでした。
特にメニーニアスなどはほとんど老人から壮年に近い役者が演じる役のように思えていたのです。
ですが、見終わった後は、そんな違和感はいつのまにか消えてしまっていました。

ーーーーーこれ以降はストーリー・演出の内容も含みます。戯曲未読の方はご注意下さい。ーーーー


客席に入り、舞台を見ると、セットは中央に黒い梯子、
背景に赤いコンクリートの壁、装置は複数の木の椅子のみとシンプル。
日本の舞台でも、椅子を塹壕や足場に見立てるという表現に慣れ親しんでいるので、
この装置演出自体はスッと受け入れられるものでした。

序盤の戦場の場面では火花や黒い煤が天井から飛び散り、
プロジェクションマッピングも使用されています。
火花は小さいですが、落ちた瞬間は暗い劇場の中がパッと明るくなるので、
その瞬間の様子はフラッシュのように鮮明に頭に焼き付きました。
“The Recruiting Officer”の演出が非常に真っ当というか、奇抜なものではなかったので、
この作品は演出家として挑戦的に試行錯誤したものだったのではないかと思います。

物語の始まりは、マーシャスの息子が、
赤いペンキで、舞台上に四角い枠を描くところから始まります。
(この枠が後の場面で部屋の壁を表したりするのです。)
その後、演者が四方から登場し、正面を向いて一列に並ぶと、一斉に舞台後方へ振り返り
観客から見えるところで椅子に着席。
その後は、他の人物の台詞から名前が出ると、
その役者が立ち上がり、前に歩み出て役に入り込みます。

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特に今回楽しみだったのは、メニーニアスが市民の反乱を胃袋とその他の臓器に例える小咄の部分です。
きっと面白可笑しくしゃべってくれるだろうと思っていましたが
お腹をポンポコ叩いたり、ウエストコートの裾をペロっと捲らせたりしながら、
身振り手振りを使って楽しく聞かせてくれました。

そして、その後登場したトムヒ演じるコリオレイナスは美しく、茶目っ気があり、
まさしく彼らしいスター性を感じさせます。
戯曲を読む分には、コリオレイナスは自己中心的で傲慢な軍人という印象がありますが、
彼の演じるコリオレイナスは若いということもあって、
その若さゆえの向こう見ずさという一面も加わっているようです。

茶目っ気という点では、武功をあげて帰ってきたコリオレイナスが、
周りに推されていやいやながら市民から執政官となるための推薦状をもぎ取る場面が特に見所です。
この作品は悲劇ではありますが、コミカルに演じられて少し息抜きになる部分でもあります。
またコリオレイナスが独白をするたびに、周りに語りかけるように天井を見上げて喋るので、
劇場で見ているとついつい「トムヒが自分に向かって喋りかけている!」と錯覚してしまいます。
いや、錯覚ではないと信じたい!(笑)

また、批評で”2人の描き方がゲイっぽすぎる”と方々で見かけた、
コリオレイナスとハドリー・フレイザー演じる宿敵オーフィディアスの関係。
ヴォルサイに潜伏するコリオレイナスと再会した時のオーフィディアスの歓迎ぶりが、
殺すのかと思いきや、ナイフを構えたままキスの嵐を浴びせかける様子が余りにも愛に溢れ過ぎて(笑)
「ここか例の部分は…」と理解しました。
戯曲でも仇敵という関係を超えた友情の態度を見せ合う2人ですが、
この過剰なまでの愛情表現は客席へのサービスでしょうか…。

ハドリーさんは「レ・ミゼラブル」のマリウス役でデビューされてから
ミュージカル俳優としても知られる優れた役者でいらっしゃいます。
オーフィディアスにしておくには勿体ないですね。
後ろで座ってる時間が長いし…。勿体ない。

観客へのサービスといえば、戦いから戻ったコリオレイナスのシャワーシーン
見る前から既に話題になっていたので、そういう場面があることは知っていたのですが、
実際見たらちょっと照れくさくて笑ってしまいました。劇場の中でも若干クスクス笑い声が…(笑)。
シャワーというか、打たせ湯って感じ。
しかし、傷の痛みを堪えながら血まみれの体を洗い落とすトムヒの演技は素晴らしかったです。

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メインの役者だけでなく、脇役の演技も触れないわけにはいかないでしょう。
コリオレイナスを尊大に育てあげた母、ヴォラムニアは、
映画「英雄の証明」のヴァネッサ・レッドグレイヴの演技が強烈に印象に残っていたのですが、
デボラ・フィンドレーも、非常に力強い母親像を演じていました。
ヴァネッサは、コリオレイナスが追放された後も相変わらず強気な母親であった一方で、
デボラの演じた母は、まとめていた髪を下ろし、物腰も少し柔らかくなって疲弊した母親。
もちろん息子を正しい道に導こうとする強固な姿勢は変わりませんが、
彼女の様子から、その後の一家のローマでの扱われ方がなんとなく想像出来るのです。
(私の中でデボラは今でもグラナダ版ホームズ「ボール箱」の腹の立つ次女というイメージですが・笑)

妻のヴァージリアはデンマーク出身のBirgitte Hjort Sørensenが演じています。
母よりむしろこの妻の方が切れ具合が痛快でしたね。
戯曲のイメージだと、ひたすら打ち拉がれているような雰囲気なのかと思いきや、
夫のコリオレイナスを追放した護民官に食って掛かるところなんか、
暴走列車のようで面白かったです。

護民官については、ドンマー版の興味深い部分として、
護民官のシシニアスが男性ではなく、女性のシシニアとして描かれている点が気になりました。
どういった解釈で”彼”が”彼女”になったのかは分かりませんが、
(どこかに書いてあったかな…)
男性のままのブルータスとの恋愛関係もはっきり描かれていました。
カップルにすることによってブルータス&シシニアの強固な関係を示したかったのかもしれません。
この二人は、この舞台の中でもとてもユーモラスな存在で、メニーニアスとのやり取りも軽妙でした。
ヴォラムニアから散々罵られた後、ブルータスの言う
「なるほど…じゃあ(行く方向を指差して)行きます」の台詞なんかは笑ってしまいます。

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後から気付いたのですが、コミニアスを演じていたPeter De Jerseyって、
映画「バンク・ジョブ」やドクター・フーの”The Day of the Doctor”にも出ていたんですよね。
見覚えがある人なのに初めてみたような気分で見てしまっていた…。
コミニアスはこの作品の中で一番気分にムラのない、まともな?キャラクターに思えます。
国に対して忠実ですし、コリオレイナスに対しても常に敬意を持って接します。
議事堂内ではメニーニアスとコショコショ内緒話をする姿が目立ちました(笑)。
2人で何を喋っているのか気になる…。

コミニアスは、ヴォルサイの将軍となったコリオレイナスにローマへの進軍を止めさせようと説得を試みますが、
故国に捨てられたコリオレイナスは断固として進軍を止めようとはしません。

私が最も感動したのは、コミニアスの帰還後、護民官に説得されてメニーニアスがコリオレイナスに会いに行く場面です。
コミニアスが追い払われたことで自分も追い返されるかもしれないと、渋るメニーニアス。
「でも、食事前の機嫌の悪い時に会ったのかもしれないしな」と複雑な表情を浮かべながらもなんとか重い腰をあげます。

正直、戯曲を読んだ後、この場面は「コメディみたいにならないのだろうか?」と思っていました。
時に厳しく、友人として、父代わりとしてコリオレイナスを諭して来たメニーニアスは、
“愛する息子”が自分を歓迎しないはずがないと断言するのですが、
信じようとしないヴォルサイの衛兵たちに追い払われようとされているところで、コリオレイナスが現れます。
メニーニアス「おまえたち、今に見てろ!」と親が迎えに来たいじめられっこのような台詞を吐くのですが(笑)
コリオレイナスは彼に「失せろ」と言い放つのです。

文字でこの部分を読むと、勘違いしてたメニーニアスがひどく滑稽に見えてくるのですが、
私たちが目にしたのは、愛するものを失ったことに深く傷つき、絶望的なまでに悲しむメニーニアスの姿でした。
跪いてコリオレイナスの手を取り、涙を拭いながら祖国を救うよう懇願したにも関わらず拒絶されたメニーニアス。
彼の顔からは色が失せ、肩をがっくりと落とし、立ち去りながらコリオレイナスから受け取った手紙をハラリと落とします。

マークの生の芝居を見たいがためにまたドンマーにやってきた私は、
こんなにも胸を打つ芝居をする人なんだと心をさらに鷲掴みされました。
彼はコメディアンとして舞台経験は何度も踏んでいるはずですが、
コメディ以外でも経験を積む程に舞台役者として成熟していっているように思えます。
彼は単なるキャラクター俳優ではないのですよ!

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本来の戯曲通りであれば、この後にヴォラムニアが義娘と孫を連れて息子に会いに行き、
ついにコリオレイナスがローマとの和睦を約束した後、
メニーニアスとシシニアスが母上の説得を待っている場面が入ります。
しかし、ドンマー版では母上がコリオレイナスの説得に成功し、
ローマへと帰った後にすぐオーフィディアスたちに裏切り者として捕らえられます。
そしてそのままエンディングへ。

ドンマー版の脚本は、端役の会話等をあちこち大胆に削っているのですが、
どれも確かに無駄に感じられる部分なので、
この改訂も、メニーニアスの出番が減ってしまったものの、納得の行くものだったと思います。

エンディングはとてもショッキングですが、実はこの前に見た”Mojo”でも同じような光景を目にしたので、
「最近は○○されるのが流行ってるのか?」と思ってしまいました(笑)。

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見終わってしばらく経ってから振り返ってみると、
このドンマー版は、シェイクスピア作品の古典としての芸術性よりは
エンタテインメントに徹して作られているように感じました。
もちろん、民主主義と独裁主義の対立、またそのどちらも実は残酷な政治体系であるということが根本に描かれていますが、
先に書いたように、数々のサービスシーンや、狭い空間の中で使われた演出上の試みは、
見る者をまず刺激しようとする意識が汲み取れます。

観客は年配の方も少なくなかったですが、
やはりトムヒを目当てに見にきた若い世代にも、(私のような異国から来たものに対しても?)
敷居を低くする意図があったかもしれません。
実際、見終わった後、想像よりも受け入れやすい作品だと感じられました。

ドクター・フー50周年ドキュドラマ”An Adventure in Space and time”同時再生実況ツイートまとめ

5月23日(土)7pm(日本時間翌3am)より、マークが脚本・製作を担当したドクター・フー50周年ドキュドラマ”An Adventure in Space and time”の同時再生企画が開催されました。
マークと演出家ウァリス役のサシャ・ダワンがツイッター実況で参加。
この記事では舞台裏を語るマークのツイートを訳してまとめています。
ツイートの下が日本語訳、続いて青枠の中が解説です。

「終わりには程遠い」

※1代目ドクターのエピソード”Tenth Pranet”でのセリフ

「明日の夜7時、”AAiSaT”同時再生にみなさんが参加できることを願っています」
「今夜7時!」
「”AAiSaT”は本当の意味で愛するからこそやった仕事だった。僕は3代目ドクターで育ったけど、神聖な作品の中で語られるDW初期の魔法にはいつも心を奪われる。(初期のメイキングがあるのは知っているけど、これは僕なりのメイキングです)
「もちろん、バーンズ・コモン! このシーンは元々、デヴィッド・ウィテカーの”Dr Who and the Daleks”のように、霧の中での衝突から始まった。実際の撮影現場はウィンブルドン・コモンで、‘The Massacre’の最後でターディスが建てられた場所でもある」

※冒頭の車のシーン。”Dr Who and the Daleks”は1964年に出版されたデヴィッド・ウィテカー作のドクター・フー小説。ドラマ版とは異なり、コンパニオンがバーンズ・コモンで起こった交通事故で出会うシーンがあります。”The Massacre”は、1966年に放送された1代目ドクターのエピソード。

「僕はオリジナルのサイバーマンを今作に入れようと決めていて、ポール・マクナマラ(小道具担当)がオリジナル・チームと同じくらい素晴らしい仕事をしてくれた。喫煙シーンは”Revenge…”のサイバーマンの写真に触発された」

※”Revenge…”は4代目ドクターのエピソード”Revenge of the Cybermen”?

「想像の通り、ウィリアム・ラッセルの出演は特別だった。
彼は役の元になった守衛を覚えていたんだ!
これが協力的で頭の切れる彼とイアン第2世代、ドクター・フー一族から迎えた素敵なジェイミー・グローバー」

※ウィリアム・ラッセルはかつて1代目ドクターのコンパニオン、イアン役でドクター・フーに出演。”AAiSaT”には守衛役で出演しています。
ジェイミー・グローバーは”AAiSaT”の中のウィリアム・ラッセル役として出演。彼の父ジュリアン・グローバーはリチャード一世役などでドクター・フーに出演している「ドクター・フー2世」です。

「シドニーはとても多彩なキャラクターで、キャスティングが大変だった。ジョン・リスゴーやジェームズ・ガンドルフィーニでも話し合っていたんだ。
そしてブライアン・コックスを”The One Show”で見て… バン!バン!バン!
ブライアンは休暇の予定を変更してやってくれることになった。彼はテレビジョン・センターにも温かい思い出を持っていたんだ」

※”AAiSaT”の撮影場所であるテレビジョン・センターは1960年代からBBCの名物番組の数々が収録されたスタジオ。このドラマが撮影された直後の2013年に一度閉鎖、再開発中。

「ああ、ヴェリティ! 彼女と少し知り合うことが出来てラッキーだった。大いなる力でありドクター・フーの忠実な友。ビジョン・ミキサーのクライヴ・ドイグが彼女の「赤いワインのキス」について詳しく教えてくれた。(続く)
「(続き)ヴェリティ、ウァリス、シドニー、ビルを主要キャラクターにするべきだとはっきりした。テリー・ネイションとレイ・キューシックのサブプロットや、トニー・ハンコックのカメオ出演もあったんだよ!
後にジェシカ・レインが新生児誕生の専門家になったんだけどね…」

※テリー・ネイションはドクターの天敵ダーレクが初登場するエピソード”The Dalek”の脚本家。そのダーレクをデザインしたのがレイ・キューシック。トニー・ハンコックは当時の人気俳優。ジェシカ・レインがドラマ「コール・ザ・ミッドワイフ」に助産師役で出演していたため「新生児の誕生」と「ドクター・フーの生みの親」を引っ掛けている。

「『ガラス瓶の中の脳みそ』。想像してみて!」
「あの大道具部屋はドクター・フーのものでいっぱいだった!スウィートヴィルの門も入ってる!」

※「スウィートヴィル」はマークが脚本を書いたドクター・フーの「深紅の恐怖」に出てくる共同体。

「ジェシカ・カーニーは、細かい部分で大きな助けになってくれた。彼女は祖父母に『ジュディ』や『ジュディ・プディ』と呼ばれていたんだ。ヘザー・ハートネル役に偉大なレスリー・マンヴィルを迎えたことは幸運だった。彼女は古い友人で、ビルの辛抱強い妻に素晴らしい儚さをもたらしてくれた。

※ジェシカ・カーニーはウィリアム・ハートネルの本当の孫娘。BFIで行われたプレミア上映でもマークらと共に登壇していました。

「これは番組から一番最初にツイートしてみんなが興奮した画像!
ここで見えているのはデヴィッドの目だけ、でもビルの目にすごく似てて不思議。
僕はというとテレビの中でしゃべる会話を急遽書かなければならなかった。’I only arsked!’」

※’I only arsked!’はウィリアム・ハートネルが出演したシットコム”The Army Game”の中で出てくるキャラ、ポップルウェルのキャッチフレーズ。同名のスピンオフ映画も作られている。

「ドクター・フーの誕生に関わった人々を公平に扱おうとするのは信じられないほど大変だった。初期の台本にはデヴィッド・ウィテカーに”バーニー”・ウェバー、”悪役”のジョアンナ・スパイサーも出てきた。最終的にマーヴィン・ピンフォールドが彼らの多くを象徴する存在になった」

※デヴィッド・ウィテカーは脚本家。今作で描かれる第一話”An Unearthly Child”から台本編集者として関わっている。C. E. “バーニー”・ウェバーも脚本家で、第一話の企画に関わっている。ジョアンナ・スペンサーはドクター・フーの発足に関わったアシスタント・コントローラー。欧州放送連合のBBC代表も務めている。BBCの番組ページに紹介文あり。

「ジェフ・ローレがマーヴィン役で出演してくれたのも嬉しかった。子供の頃、彼の”Billy Liar”が大好きだったし、もちろん彼は永遠にPlantagenetだ! よく言うだろ、『テレビジョン・センターは自らを葬る』。彼の発明したオートキューの最後は”The Dambusters”の似た場面に影響を受けた。

※ジェフ・ローレは5代目ドクターのエピソード”Frontios”で惑星の住人Plantagenet役で出演。”Billy Liar”は1970年代にITVで放送されたシットコム。
マーヴィン・ピンフィールドは劇中で紹介された通り、初期のプロンプターの発明者として知られている。”The Dambusters”は1955年に公開された英国の戦争映画「暁の出撃」?

「最初にデヴィッド・ブラッドリーをビル・ハートネル役に、と提案したのはエドガー・ライトだった。彼の言う通りだったよ。デヴィッドは昔ながらのバラエティからRSCまで素晴らしい背景を持った面白い人だ。彼のファンであり、一緒に働くのは喜びだ」
「サシャ・ダワンもまたこの仕事での喜びの一つ。一体彼に何があったんだ!?
これはとても感動的な読み合わせでの彼と、ウァリスの『ドラマシリーズA』のためのノートや企画を収めたオリジナル・ファイル。

※サシャ・ダワンはこのドラマ出演の後、13代目ドクターのエピソードで”あの役”を演じています。

「トビー・ハドク警報! ヴェリティとウァリスのアウトサイダーの立場を強調することは僕にとって非常に重要だった。とても若く、変わっていて、才能溢れている」

※トビー・ハドクはスタンダップ・コメディアンで俳優。ドクター・フーの大ファンで番組をテーマにした舞台”Moths Ate My “Doctor Who” Scarf”を成功させ、DVDのコメンタリーで進行役を務めたことも。今作ではウァリスの注文を無視するバーテンダー役で出演。

「『たくさんの人たちが番組の誕生のために立ち会って、一日中ここにいる!』
人や出来事や時間をまとめるのは脚本家の仕事…これほど辛いことはない。
ドクター・フーのファンとして、重要な人物を除外するのは二重に難しかった」

※レストランでヴェリティがビルに番組の説明をするシーン。

「このモンタージュ、大好き」

※オープニングの合成映像について。

「ジェシカは赤ちゃんの取り上げ方がかなりうまくなったね!」
「チーム! ジェイミー、ジェマ、クラウディア(彼女は初仕事、ジェシカ・カーニーがエージェント!)はまさに完璧なラス、ジャクリーン、キャロル・アン。
記者会見の場面を繰り返して、ビルの嫌悪感の高まりを表す仕掛けが好きだったよ」
「おじいちゃん :)」

※ウィリアム・ハートネルの孫娘ジュディは彼を’Sampa’と呼んでいる。

「もちろんこのリハーサルはチャーチホールでやるはずだったけど、余裕がなかった!」

※パイロット版のリハーサルシーン。

「宇宙船の中!」

※ウァリスが「ここでテープを止めて、宇宙船の中に入る」と出演者に説明するシーン。

「僕らの素晴らしい演出家からメッセージ:
『バン!バン!バン!
テリー・マクドナーから作るのと同じように楽しんで見てくれているファンへ!』
すべてを実現してくれた(製作の)マット・スティーヴンス、カロ・スキナー、リチャード・クックソン、そしてスティーヴン・モファットにも感謝」
「デイブ・アロースミスと彼のチームの素晴らしい仕事に大感謝。
ターディスに足を踏み入れた人は皆息を飲んだ。ピーター・ブラチャッキも驚いただろう。
多分、喜んだだろうね!
それにあの廃品置場のゲート…みんな震えたよ!」

※デイブ・アロースミスは今作のプロダクション・デザイナー。ピーター・ブラチャッキは劇中にも登場するターディスの内装を担当したデザイナー。

「これほど美しいものはない!」

※ついにターディスが完成したシーン。

「撮影初日に偉大なウァリス・フセインを迎えられて光栄だった。
彼自身とその友人たちが再現されるのを見るのは非常に感動的な経験だ。
彼の見事な仕事がなければ、この作品は実現しなかっただろう。
元祖、と言っていい」
「第1話はここまで酷い状況にはならなかった!
スプリンクラーが回ったのは‘The Aztecs’だと思う」

※第一話撮影中にターディスのドアが開いたり、スプリンクラーが回り始めるトラブル続きのシーン。”The Aztecs”は1代目ドクターの第6話(シリーズ)。

「バカな!」

※撮り直し宣告のシーン?

「このシーンのデヴィッドとジェシカは素敵だ」

※撮り直しの報告をするヴェリティがビルを励ますシーン。

「気を強くね!
放射能測定器は点滅するはずだった! いつも気になる」

※第一話の放送がやっと決定しヴェリティとウァリスが安堵するシーン。ターディスの放射能測定器の”危険”部分はオリジナルでは点滅しているが、今作では点滅していない。

「暗殺のライフルの組み立てとダーレクの描写を対比させるのは”AAiSaT”ではじめにあったアイディアの一つだった。
とても効果的で物憂げな瞬間だと思う。
ショーン・バレットのアナウンスで父親が息子を抱きかかえる姿にいつも胸を打たれる」
「この場面でのジェシカの輝きが好き。ヴェリティには手出ししない!」

※ヴェリティがシドニーに堂々と立ち向かい、第一話の再放送を要求するシーン。

「見て! 美しいダーレクたちだ! ニコラス・ブリックス警報!」

※ダーレクが初登場するシーン。俳優で製作者のニコラス・ブリックスは21世紀のドクター・フー新シリーズでダーレクやサイバーマンの声を担当していることで知られています。今作では当時ダーレクの声を担当していたピーター・ホーキンスを演じています。

「キャロル・アン! 『テレビが始まったわよ!』」

※1代目ドクターのコンパニオンで孫娘を演じたキャロル・アン・フォードは、遊びに出た子供たちを呼ぶ母親役でカメオ出演しています。

「テレビジョン・センターに祝福を。僕らは古い形のその場所で撮影した最後のドラマだった」

※ダーレク回が成功して喜ぶヴェリティがウァリスと抱き合うシーン。

「本物のドクター・フーのスタイルで、廃品置場の階段をマルコ・ポーロのセットに再利用した!」

※1964年放送のエピソード”Marco Polo”の撮影場面。

「『昨夜ダイヤルをいじったのを見た。だからどんな状況でも触ってはならないものを教えようと決めたのだ』
デヴィッド・ウィテカー作の”Dr Who and the Forbidden Subjects”。
クライブ・ドイグの引き出しの中で見つかった!」

※ウァリスが番組を離れ、ビルが朗読をするシーン。クライブ・ドイグはBBCのビジョン・ミキサーとして当時ドクター・フーに関わっていたプロデューサー。

「年刊ドクター・フーのアートワークを作る余裕がなかったので、自分のために依頼した。
ショービジネスのルールその1:自分の金を番組につぎ込むな!
ショービジネスのルールその2:自分の金を番組につぎ込むな!」
「もちろん、僕らの何人かは以前にウェストミンスター橋でダーレクになったことがある」

※ドクター・フー30周年を記念した番組”More Than 30 Years in the TARDIS“でウェストミンスター橋のダーレクが再現されることになり、操縦するスタッフ不足のため俳優組合に入っていたマークがダーレクに入ることが出来たらしい。

「『一発で書き換える』それこそ作家だ!」

※降板するキャロル・アンを引き止めるビルのシーン。

「どのくらいだ、ドクター? どれほど長く生きている?」

※4代目ドクターの「モービアスの脳」からの引用。このストーリーは13代目のシリーズにも影響を与えていると言われています。

「誰もが共感できる人間ドラマとして物語が成り立つことが極めて重要だった。
もちろん、僕らはみんな取り替えが効く…」
「Zarbiも欲しかったな。マシュー・スウィート警報!」

※マシュー・スウィートは評論家で作家。マークの対談の聞き手役としても頻繁に共演しています。彼が演じているの“The Web Planet”に登場する蜂のようなヒューマノイドMenoptera。Zarbiは蟻型のインセクトロイド。

「たくさんの旧友との別れがある。元々ヴェリティが”Adam Adamant”の製作に移ると語ることになっていたが、現代社会に合わない時代遅れの男の話をするのは賢明じゃないと気付いた。
『また会う日まで』…たまらない」

※”Adam Adamant Lives!”は1960年代に冬眠状態から目覚めた19世紀生まれの冒険家が主人公のドラマ・シリーズ。ヴェリティやシドニーが製作に関わっています。

「『ツイードとタバコの煙』の1963年と古代中国の栄光の対比、そして驚くべきスザンヌ・ケイヴと(BAFTA受賞の!)ヴィッキー・ラングの才能が結実。美しい仕事、だけどピーター・パーヴスの『トイメイカー』セーターにはかなわない!」

※スザンヌは衣装デザイン、ヴィッキーはメイクアップ担当。ピーター・パーヴスはドクター・フーでコンパニオンのスティーブン・テイラーを演じた役者。”The Celestial Toymaker”と言うエピソードで画像のセーターを着用。

「抜け目のない人の声のカメオ出演です」

※どうやら調整室からビルに指示を出す演出家はマークが演じていたようです。

“The Massacre“からのこの短いセリフが雰囲気にぴったり合っていた。
『視線の先にたくさんの人が踊っている』知ってる人たちのために」

※”The Massacre of St Bartholomew’s Eve”は1966年放送のストーリー。

「僕は失われた物語の一部を再現できるかもしれないという期待でワクワクしていた。
‘The Myth Makers’, ‘Masterplan’ そして ‘The Masters of Luxor’といった物語が初期の台本に書かれていたが、予算が許さなかった。
サラ・キングダム役のジーン・マーシュと再会する機会を失ってしまったのが一番残念」

※ドクター・フーには幾つかの映像が残っていないストーリーが存在する。サラ・キングダムは失われたエピソードの一つ”The Daleks’ Master Plan“に登場する宇宙秘密諜報部のエージェント。

「『歴史は変えられない、一行も!』もちろんこれは”The Aztecs“からの引用で、続くすべてが真実であると説明するのにちょうどいい。
この企画は何年も書きたかったんだ。これは2002年の初期のあらすじ」

※”The Aztecs”は15世紀のスペインを舞台にした1964年6月放送のストーリー。

「初期の草稿では、ビルの代理人(で義理の息子)であるテリー・カーニーや、たくさんのパブのシーンが含まれていた! 草稿1ではコテージでものを整理している成長した孫娘ジュディの構想があったり、草稿2では”Points West”のインタビューを使っていた。

※”Points West”はBBCの地域ニュース番組。

「『幸運の女神よおやすみ、もう一度微笑みかけてくれ、運命の歯車を回せ」」

※劇中に登場する「リア王」の引用。

「『離れたくない』…また、たまらない」

※自宅で降板を悲しむビル。10代目ドクター再生前のセリフの引用でもあります。

「エドマンド・バットの素晴らしい楽曲は、ハチャトゥリアンの「仮面舞踏会」のワルツに影響を受けたもの。「時の渦巻き」のような感覚があると、僕から提案した。ロマンティックで、でもわずかに気まぐれで制御不能な感じが、ターディスっぽい」
「さあ来た… このアイディアを思いついた時、僕は泣いた」

※11代目ドクター、マット・スミスのカメオ出演。

「最後の瞬間ギリギリまで、マットが現場でカメオ出演してくれることを願ってた、でもスケジュールで不可能だった。
だからあれは僕の手なんだ!
“Plabet of the Daleks”でジョン・パートウィーがやってたことを思い出してみて!

※マットのカメオ出演は合成で現場にはおらず、ターディスを操作する手はマークだった!と言うことですね。確かに3代目ドクターの”Plabet of the Daleks”の中で、ターディスに両手を置き、テレパシーでメッセージを送るシーンが出てきます。

「そして、もちろん最後はオリジナルで締めくくらねばなりません。
これを実現させてくれた皆さんに心から感謝しています。誇りに思います。
『ドクター? みんなを元気にしてくれるの?』
そうだよ♥」

※“A Doctor?…”は孫娘のジュディのセリフです。