今熱く語りたい!リーグ・オブ・ジェントルマン(The League of Gentlemen)とは?

今回は、マークがメンバーとして出演していた、英国BBCのTVコメディ番組
「リーグ・オブ・ジェントルマン(以下TLoG)」
について紹介します。
※正式には”ジェントルメン”ですが、日本版タイトルにあわせてジェントルマンと表記しています。

TLoGは、簡単に言えば“ダーク・コメディ”
ストーリーは、ベンジャミンという青年が、友達とハイキングをするために英国北部にある町
“ロイストン・ヴェイジー”を訪れるところから始まり、
潔癖性の叔母夫婦(とその娘である双子)、
訪れたよそ者は必ず行方不明になってしまう雑貨屋(ローカル・ショップ)、
怪しげな”特別なもの”を売る肉屋、性転換希望の女装運転手等、
ロイストン・ヴェイジーの不気味で個性的な人々の日常と、町に起こる事件を描いていきます。

コメディと言っても、全3シリーズ(各6回)+クリスマス・スペシャルとある番組の中で、
観客を入れた笑い声が挿入されてるのは始めだけで、
後半になるに従い、スケッチ(コント)というよりは、
ドラマのようなストーリー性のある番組になっていきます。

とにかくたくさんのキャラクターが出てきて、
そのほとんどを出演者である3人が男女関係なく演じ分けています。
この番組の魅力は、コメディであっても出演者の真実味溢れる演技と、
そしてだんだんとキャラクターに愛着が湧いて来る
ところではないでしょうか。
そして「ウィッカーマン」「赤い影」「シャイニング」等の
映画ファンならニヤリとさせられるオマージュが含まれている点も忘れられません。
(また、3人だけで役を回しているとは思えない程、メイク技術が素晴らしいです!)

とりあえず1話でも見て、この記事を読んでいただければグッと身近なコメディになること間違いないです。

以下のニコニコ動画のリンクから見ることが出来る様にしてあります。
リーグ・オブ・ジェントルマン “Welcome to Royston Vasey” その1

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気に入ったらぜひ続きもチェックしてみてください。

※以下はもう少し詳しく紹介。長いので時間があればどうぞ。

【中の人たちについて】
TLoGは(写真左から)
作家&出演者のスティーヴ・ペンバートン、
作家のジェレミー・ダイソン、
作家&出演者のリース・シェアスミス、
作家&出演者のマーク・ゲイティスの4人組です。

彼らは出演の3人が演技を学んでいた
Bretton Hall College時代に知り合い、
1994年に”The League of Gentlemen”のチーム名でCanal Café Theatre等の芝居小屋で公演します。
(4人で組むまでは、リースは職探し、
スティーヴは別の劇団を立ち上げていて、
マークはドクター・フーの小説を執筆、
ジェレミーは本屋で働いていたらしい。)
チーム名は映画”The League of Gentlemen(1960)”にちなんで、
スケッチの内容と反する気取った名前をとマークが名付けたものだそう。

舞台でテレビ・シリーズの元祖となるキャラクターを生み出してきた彼らは
1997年、エディンバラ国際フェスティバルでコメディアンに与えられる最高の賞“Perrier Awards”を受賞します。

そして同年11月にラジオ版の番組”On The Town with The League of Gentlemen”が製作され、
こちらもラジオ番組向けの賞を2つ受賞。
(ラジオでは町の名前が「ロイストン・ヴェイジー」ではなく「スペント」という名前になっています。)

同じくBBCの大ヒットコメディ番組「リトル・ブリテン」の出演者&クリエイターであるDavid Walliamsは、
2012年に出版された自身の自伝でこんなことを書いています。
「史上最も偉大なコメディのひとつはTLoGだ。
彼らはそれぞれが強烈な知性を持っていて、僕は多くを学んだ。
スケッチはコンセプトというよりはキャラクターで成り立っていて、当時では異例のもの。
要求に黒字で答えるだけでなく、3人の役者は潜在的なスターだった。
うだるような暑さの中、エディンバラの劇場に数えきれないほど彼らのショーを見に行った。
それは明らかにすぐにTV番組に出来そうなものだった。」

(ちなみにマーク・ゲイティスは「リトル・ブリテン」にスクリプト編集者として関わっています。)

舞台&ラジオの成功を経た後、ついにTLoGのテレビ版が製作され、
英国アカデミー賞(BAFTA)ベスト・コメディや、
モントルーで行われる”テレビ界のカンヌ” ゴールデン・ローズでGolden Rose of Montreuxを受賞するに至ります。
(ちなみにロンドン五輪開会式を湧かせたR・アトキンソンの「ミスター・ビーン」も
1990年にGolden Rose of Montreuxを受賞しています。)

それでは、出演者ごとにそれぞれの役柄を紹介しましょう。

【リース・シェアスミス(Reece Shearsmith)】

コミカルな動きと様々な声色を駆使し、
“ザ☆コメディ俳優”としての圧倒的なオーラを放つリース!
このチームの中でも、”戦隊ものの赤色”的立ち位置な気がします。

●演じるキャラクター●
叔母の家を訪問するベンジャミンのような、人の良さそうな男の子を演じることもあれば、
自分の思い通りに事が運ばないとすぐ銃を取り出して周囲を脅す会社員のジェフ(写真右)、
社会問題を取り上げた演目を上演しているにも関わらず偏見に満ちている
アマチュア小劇団”レッグズ・アキンボ”のリーダー=オリー、
ギャンブル好きのあばずれ主婦、ステラ等、
男女問わず強気で強引なキャラを演じています。

中でもシリーズ2から登場するサーカスの団長”パパ・ラザルー”(写真中央)は、
英国コメディ界に名を残す特異なキャラのひとつとして知られています。
何故か誰に対しても「デイブ」と呼びかけ、
夫が留守の主婦や未亡人の結婚指輪を奪って無理矢理妻にしてしまいます。
そしてサーカスのテントに連れていって…
ちなみに、黒塗りしたピエロのように見えますが、これは地肌なようですw

【スティーヴ・ペンバートン】

リースと執筆でコンビを組むスティーヴ。役柄でもコンビを組むことが多いです。
こんな不気味な番組のキャラクターなのに、彼が演じると、
チャーミングな個性と優れた演技で視聴者は親近感を抱くようになってしまいます。

●演じるキャラクター●
とにかくスティーヴの演じる女性は皆魅力的!
よそ者を怖がる世間知らずなローカル・ショップのタブス(写真中央)、
求職者いびりが喜びで、”ペン”だけが友達な職業訓練所の先生=ポーリーン(写真右)、
煙草と酒と、ゲイの男友達と遊ぶのが好きな自己チュー女のティッシュ等々。
まさに“ジェンツ界のテリー・ジョーンズ”(=女装がハマり役)
それぞれイラっとくるキャラクターなのに、嫌いになれません。
むしろ可愛く思えて来るのが不思議。

若い男の子に積極的なモーションを掛けるゲイのドイツ人教師ハー・リップも、
始めのうちはキモいのですがw、見ているうちにだんだん好きになってきます。

【マーク・ゲイティス】

温厚そうな人柄に見えてダークなものを好んで書くマークの嗜好は、
そのまま役柄に反映されています。
無垢な心を持った青年と悪巧みをする邪悪な大人の役を見事に両立させる、稀少な演じ手です。

●演じるキャラクター●
一番インパクトがあるキャラクターは、肉屋のヒラリー・ブリス(写真中央)。
でも間違いなく一番笑えるのは、獣医のチネリー先生です。
とても優しくて動物大好きなのに、最後には治療に失敗して必ず殺してしまいます
いい人だけに気の毒で気の毒で笑えて仕方ないw
職業訓練所のポーリーンを慕うミッキーも、不潔でおバカですがファンに愛されています。

愛嬌のある役の一方で、
子供を事故に遭わせて以来、暗闇に死んだ子供の顔を見るようになった
と、ネクラな案内しかしないストンプ・ホール洞窟の案内人ミックや、
かつてロックスターだった?ことを心の支えに生きる元バンドマン
レス・マックイーン(写真右)のような悲哀に満ちた役もお似合い。
ジョーク屋のランスを主人公にしたシリーズ3の2話目は
短編ホラーのようでTVコメディの枠を超えた一編です。

【ジェレミー・ダイソン】

スケッチの執筆はマークとコンビを組んでいるジェレミー。
演技を学んでいた他の出演者と違い、リーズ大で哲学を学んでいた彼は、
TLoGが舞台で活躍していた時代に、出演はしないと決めたそうです。
2005年に作られた映画でも、自分の役を別の役者(「クイーン」でブレア首相を演じたマイケル・シーン)に演じさせています。

ですが、実はエキストラとしていくつか出演しているのです。
例えば、レス・マックイーンから使用済みライターを買い取る人(写真)や、
クリスマスSPでチネリー先生の手術を息をのんで見守る男性、
リースが他の役を演じている間に別のリースの役の扮装で出演していたり。
ジェレミーがどこにいるのか?を探しながら見ると楽しいかもしれませんw

【テレビ以外のTLoG】
この番組はシリーズ1、シリーズ2、クリスマス・スペシャル、シリーズ3と作られていますが、
2001年、クリスマス・スペシャルの後に行われたツアーの模様をおさめた”Live at Drury Lane”と
2005年に”パントマイム・ショー”(クリスマスの子供向け舞台)をテーマにした”The League of Gentlemen Are Behind You”と
2つの舞台がDVD化されています。
残念ながら日本発売はされていませんが、探せば某Tubeにあるので、個人の判断でお試しください。

それと、2005年には映画も製作されています。
タイトルは”The League of Gentlemen’s Apocalypse”。
これも日本発売はされていませんが、リアルな世界(つまり番組の作家がいる世界)に
ロイストン・ヴェイジーのキャラクターたちが入り込んでしまう
という珍妙な映画です。
ライトなファンにはオススメしませんが、
TLoGが好きでたまらない方はamazon.ukで注文してみてください。

「3人揃って出演している映画」は、まず「銀河ヒッチハイクガイド」があります。
たくさん出てくるヴォゴン星人の声を担当しているので、誰がどの声か、聞き耳を立ててみましょう。
(スティーヴは”地球上の”バイパス工事の責任者?としても出演してます。)
またニコール・キッドマンが出演している「バースデイガール」にも3人揃って出演しています。
それぞれが短い出演時間(マークに至っては5秒程度)なので、
CSで放送された際には注意深くチェックしてみてください。(レンタルするほどではないのでw)

【TLoG後のジェンツたち(主な関連作をざっくり紹介)】

リース&スティーヴはこの番組の後、2009~2011年の間にBBC2で放送された“Psychoville”“Inside No. 9”を製作し成功させています。
(”Psychoville”シーズン1ではマークがカメオ出演。)

その他、リースは国内で公開されている映画にメンバー中、多く出演しています。
ベン・ウィートリー監督の「ハイ・ライズ」
エドガー・ライト監督の「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」ショーン・オブ・ザ・デッド
ジョン・ランディス監督のバーク アンド ヘア等。
舞台作品は、ミュージカル「プロデューサーズ」と”Betty Blue Eyes”で主演(”Betty…”ではオリビエ賞にもノミネートされました。)
ストレート・プレイはマーティン・マクドナーの”Hangman”やアラン・エイクボーンの”Absent Friends”等。
日本で見られるドラマには「アガサ・クリスティー ミス・マープル」の「無実はさいなむ」に刑事役で出演。

スティーヴの方は、映画「ミスタービーン カンヌで大迷惑」や、ウディ・アレンの「マッチポイント」にも刑事役で出演しています。
舞台ではウエストエンド版ミュージカル「スペリング・ビー」など。
ドラマ「名探偵ポワロ」の「ナイルに死す」で医師に扮した他、ホワイトチャペル 終わりなき殺意では猟奇殺人事件研究家の役(日本ではWOWOWで放映)も。

マークはTVシリーズシャーロックの企画者&製作者&出演者、ドクター・フーの脚本家&出演者として知られています。
(「ドクター・フー」は、リースもスティーヴも別々の回で出演しています。)
映画は「シャーロック」の演出家でもあるポール・マグイガン監督のヴィクター・フランケンシュタイン
日本で公開予定のジョン・ル・カレ原作のわれらが背きし者に出演。
テレビドラマでは「ゲーム・オブ・スローンズ」の銀行家ティコ・ネストリス役、ベン・ウィショー主演の「ロンドン・スパイ」でリッチ役、
マーク・ライランス主演ウルフ・ホールでスティーブン・ガーディナー役。
舞台は日本で映画館上映され、トム・ヒドルストンと共演したシェイクスピアの悲劇コリオレイナスのほか、
ツルゲーネフの戯曲を脚色した”Three Days in the Country“でオリヴィエ賞最優秀助演男優賞を受賞しています。

ジェレミーは英国アカデミー賞にノミネートされた“Funland”で企画&脚本を担当。
これにはマークがレギュラーで出演。
舞台ではマジシャンのAndy Nymanと組んだ“Ghost Stories”で作&演出を手がけて成功させています。
こちらにはリースが出演。
テレビでは脚本を手がけリース&マーク&スティーヴ3人とも出演した”Psychobitches”が国際テレビ祭ローズ・ドール(Rose d’Or)を受賞。
ロバート・エイクマンの短編を映画化した”The Cicerones”にはマークが主演しています。

【再結成?】
映画が製作された2005年以後、4人組での作品は作られていませんが、
リース&スティーヴの”Psychoville”にマークが出演したり、ラジオ番組で4人が会したり、
全く関係が絶たれているわけではなく、
メンバーは「いい町とテーマさえあればまた一緒に作るよ」と公言しています。

また2012年にはリース&スティーヴ&マークの3人が
子供向け歴史コメディ番組”Horrible Historie”に出演し、スケッチを披露しています。
タイトルは’Movie Pitch’。
アメリカ人映画プロデューサーの役なので、3人ともアメリカン・アクセントで喋っています。
英国の歴史上の人物が映画の企画を3人にプレゼンしますが、
“ハリウッド映画”らしく作り替えて、茶化しながら史実をねじ曲げようとするので、
どの著名人も最後にはむくれて立ち去ってしまうというスケッチ。

このスケッチと同じ時期に放送されたインタビューでマークはこう語っています。
「いつ会っても僕らは楽しく過ごすんだよ…ちょうど”Horrible Histories”を撮り終えたばかりなんだ。
僕らの公式な再結成だね。
素晴らしい番組に呼ばれて誇りに思った。みんなで一日中笑ってたし、もちろん、全てが蘇った。
このスケジュールじゃもう出来まいと気付いたよ。疲れちゃうから!
だけど、信じられないのはこの番組の出演者の才能だ。
彼らは神経質なほどにうやうやしかった。
スティーヴに言ったんだ。“僕らは長老になったらしい”
…いつからそんなことになったんだ?

そして、2017年にはついに、BBC TWOにて新作テレビ用エピソードが放送されることが発表されました。

マークの出世作であるリーグ・オブ・ジェントルマンをチェックする絶好の機会かもしれませんよ!?

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以上は管理人のブログ記事「【今熱く語りたい】リーグ・オブ・ジェントルマン(The League of Gentlemen)とは何ぞや!【長文注意】」から転載したものです。※無断転載は禁止。